原因不明の肩こり、実は筋肉痛?「筋・筋膜性疼痛」とは

「責任が肩に重くのしかかる」

「肩の荷が下りる」

日本語には肩にまつわる表現がいろいろとありますが、その多くが精神的な負担の大きさを表したものです。実際、ストレス社会といわれるようになった現代では、非常に大勢の方が肩こりの悩みを抱えているのではないでしょうか。厚生労働省の「国民生活基礎調査(平成19 年度)」によると、女性が訴える自覚症状の第1位が肩こりで、男性でも第2位に挙げられています。このことからも、肩こりは非常に身近な症状だということがわかります。

ところが、病院で検査をしてみても、ほとんどの場合で特別な原因となる疾患を見つけることができません。肩こりを原因ごとに分類すると、大半が特別な基礎疾患のない「本態性肩こり」ということになっているのです。(基礎疾患によって引き起こされている肩こりは「症候性肩こり」といいます。

原因となる基礎疾患がないといっても原因がないというわけではなく、この本態性肩こりの原因になっているのがよく言われている「不良姿勢」「運動不足」「ストレス」などです。このような生活習慣の積み重ねによって、レントゲンなどの検査ではわからないほどの些細な体の変化が積み重なり、その結果として“病気ではない”肩こりという症状が引き起こされているのです。

最近、今まで病気ではないと考えられてきた体の痛みの中には、「筋・筋膜性疼痛」が直接の原因になっているケースも実は多いのではないかと考えられるようになってきました。

では、この「筋・筋膜性疼痛」とはいったいどのような痛みのことなのでしょうか。

原因不明の肩こり、実は筋肉痛の一種?

筋・筋膜性疼痛(筋・筋膜性痛症候群)とは、ペインクリニックなどの分野でよく使われる専門用語ですが、簡単に言うと筋肉痛の一種です。実は、この痛み、聴きなれない言葉とは裏腹に多くの人が経験したことがあるはずのものです。触るとコリコリとしたしこりを感じるあの状態、しかも触ると痛みを感じるあの感覚を指しているものです。


筋・筋膜性疼痛の判断材料


1 筋肉に触れるとコリコリとしたしこりがある


2 しこりを押すと痛い


3 押すと同じように痛い(再現性がある)


4 筋肉を動かさない期間があると、可動域が減る


筋・筋膜性疼痛は一般的な筋肉痛と同じように、重労働やスポーツによって筋肉を使いすぎることによって起こり、急性期の痛みは数日で治まります。ところが、筋肉を動かさないでいるとそのまま慢性痛になる場合もあります。


筋肉の使いすぎはいつも自覚できるというものではなく、中には自覚できないものがあることから、きっかけを覚えていなかったとしても筋・筋膜性疼痛になっている可能性があります。もしかしたら、あなたの原因不明の肩こりも、筋・筋膜性疼痛によるものだったということがあるかもしれません。


(参照:日本ペインクリニック学会「Ⅲ-D. 筋・筋膜性痛症候群」


体を動かし、悪循環を断ち切る

この筋・筋膜性疼痛の際にできるしこりは、最近では「トリガーポイント」と呼ばれて一般的にも注目されるようになってきています。ペインクリニックなどで行われている「トリガーポイント注射」という言葉だったら、肩こりや腰痛の治療で聞いたことがあるという人も多いかもしれません。


一般的に、筋・筋膜性疼痛は、筋肉が過度な負担を受けたとき過剰な興奮状態になり、反射的に収縮したまま固まってしまうことがきっかけとなって引き起こされると考えられています。たとえば、重たい荷物を持ち上げたときに体勢を崩すなどすると、一部の筋肉に負担が集中してしまうといったことがきっかけとなることもあるでしょう。


筋肉が部分的に硬くなると、その部分を中心に血液の流れが悪くなり、循環不全を起こしてしまいます。こうなると、内部で生まれた発痛物質がどんどん蓄積してしまい、痛みを強く感じるようになっていきます。さらに、この痛みの刺激が伝わることで反射的に筋肉が収縮を繰り返してしまうという『痛みの悪循環』が生まれてしまいます。



筋・筋膜性疼痛は男性よりも女性に数倍多く見られますが、これは全身の筋肉量が大きく影響を与えていると考えられます。厄介なことに、筋・筋膜性疼痛はレントゲンなどの画像診断や病理検査・血液検査では異常な所見が見つからず、さらに消炎鎮痛薬が効かないケースもあることが知られています。気づかずに薬物療法を続けても効果を実感できないケースがあるのです。


トリガーポイントができやすい場所は、首、肩、腰など背筋に沿った筋肉です。原因不明の肩こりに悩まされているのなら、一度下図を指で押さえて確認してみましょう。



コリコリとしたしこりがあり、圧痛があるのなら、指圧でぐりぐりとほぐしてみるといいでしょう。


先に説明したとおり、最初は筋肉痛のような症状でも、筋肉を動かさないでいるとしだいに悪循環に陥り、慢性的な痛みへと発展していきます。痛みを恐れて運動する機会が減少することでも、筋肉が萎縮してあらたな痛みが生じやすくなる環境になってしまいます。原因が筋・筋膜性疼痛だとわかれば、できるだけ早期から自発的に運動を始めるといいでしょう。


 


セルフケアのポイント


肩の慢性痛では、絶対安静が必要なことはほとんどなありません。できる範囲で体を動かし続けていくことが大切です。ストレッチのような軽い運動でもいいので、1日5分~10分。時間を作って、肩周りの筋肉を意識的に動かすことを習慣にしていきましょう。


ペインクリニックではしこりを取り除く治療も

医療機関であるペインクリニックなどでは、筋・筋膜性疼痛で生じているトリガーポイントを取り除く治療を行っています。


日本ペインクリニック学会の治療方針では、筋・筋膜性疼痛がある患者に対して、運動療法や生活指導、ストレッチング・超音波などの理学療法のほか、トリガーポイント注射でしこりのある部位に直接薬剤を注射する方法が基本になるとしています。


筋肉の過度な緊張と、血流の障害を取り除くことが大切なので、運動に対するアドバイスのほか、食事内容、入浴方法など、生活のあらゆる活動内容を詳しく聞取り、改善するように指導することも多いようです。


トリガーポイント注射は、痛みを一時的に止めて悪循環を断ち切るのがねらい


筋・筋膜性疼痛の治療のゴールは、完全に違和感を取り除くことよりも、痛みとうまく付き合いながら悪循環を断ち切って、生活の質を向上させることです。まずは、しこりの有無を確かめて、ストレッチングや体操など、体を日常的に動かすことを目標にしてみてください。


関連記事

子供の発育に悪影響!現代っ子の肩こりが心配だ

2017.07.06

子供は肩こりとは無縁、という時代ももはや今は昔。最近では環境や生活習慣が大きく変化して、肩や首の悩みを抱えている子供も多いといいます。勉強への意欲低下や運動能力の伸び悩みにも影響しかねない姿勢や筋肉のトラブル。子供たちの間にいったい何が起こっているのでしょうか。子育てに不安を抱える親御さん必見です。

頑固な肩こり、原因は肩以外かも?肩ケアでダメならここを揉め!

2017.10.30

頑固な肩こりに悩まされている方に、驚きの対処法の紹介です。今まで肩を揉んだり、肩甲骨ストレッチを繰り返したりしてもすぐにまたぶり返してしまった肩こり。実は、肩にはもう原因がないのかもしれません。いろいろなストレッチを試した結果、肩こりを感じているにもかかわらず肩周りの柔軟性は十分あるという人も多いの...

冬の肩こり予防。ポイントはコートのサイズ

2017.10.24

日に日に寒さが厳しくなってくるこの季節。増えてくる体の不調が肩こりです。運動不足や冷え込みで、血行不良になってしまうことが原因の一つだと考えられていますが、実は意外なところにも大きな要因が隠れているかもしれません。冬ならではの肩こり対策についてレポートします。

カテゴリーから記事を選ぶ